忘年会の季節が来ると、俺は胃が痛くなる。歓迎会でも、新年会でも同じだ。なぜなら、必ず誰かが、酒が入った顔で聞いてくるからだ。「田島さあ、そろそろ彼女いますか?」って。その瞬間の、世界から自分だけが浮き上がる感覚。あんたはそれを知っているか。
「まだ独身なの?」は、職場最大の地雷
正直に言っておく。あの質問ほど、人間の誠実さがムカつく瞬間はない。
なぜなら、聞く側は絶対に悪意がないからだ。むしろ、「俺たちの仲間を心配してる」みたいな表情をしてくる。営業の鈴木さん、事務の高橋さん、上司の山田さん。誰もが善意の塊だ。
「田島さん、人付き合いいいのに、なんで?」「紹介してあげようか?」「婚活とか考えてないの?」
断言する。その質問が来た瞬間、俺は死ぬ。
笑顔で返すけど、内臓はえぐられている。「いやあ、まだそういうタイミングじゃなくて」と言ってるけど、心の中は「お前らはわかんないんだよ。彼女がいないのは、単なる運じゃなくて、俺の人間としての価値が低いからなんだよ」と叫んでいる。
15年間の飲み会で、俺が学んだこと
中小部品メーカーの経理課に15年いると、飲み会というのは避けられない宿命になる。新人時代から今まで、数え切れないくらい行った。
そして、年を重ねるごとに、その質問の頻度が増える。20代のうちは「彼女できたらいいね」で済んだ。30代に入ると「いつ結婚するの?」になった。35を過ぎると、質問というより、同情に変わった。
認めたくなかったが、いつの間にか俺は「気の毒な先輩」のポジションを占めるようになっていた。
新入社員の女の子が、上司に促されて「あ、田島さんに声かけてください」と言われたのを、何度も見かけた。お節介な営業が「田島さんのために、いい子がいるんですよ」と言ってくるのは、もはや儀式だ。
でも、実は一番きついのは、そういう明け透けな話じゃない。
「いじり」という名前の殺傷武器
飲み会での独身イジリは、大きく分けて2種類ある。
1つは、ストレートなやつだ。「彼女は?」「結婚しないの?」「実は女性関係ダーク?」。これは、傷つくけど、まだ対処できる。相槌を打って、笑って、話をそらす。俺は15年でその技術を完璧にマスターした。
もう1つが、「いじり」という名目で行われる、実質的なハラスメントだ。
「あ、田島さん、得意先の営業さん、すごい美人ですよ。今度紹介します。あ、でも田島さんじゃ相手にされないか」とか、「田島さん、この飲み会で女性社員と2人きりになれるようなシチュエーション、作ってあげますよ」とか。笑いながら、俺の傷に塩を刷り込む。
酔っぱらった先輩が「まあ、見た目じゃ仕方ないね」と、誰かに言うのを何度聞いたか。「37歳で独身なのは、本人の努力不足」という空気が、テーブルの上に垂れ込める。
正直、その空気の中で、ビールをグイッと飲むのが、俺の夜の儀式になっていた。
忘れられない瞬間たちが、俺を殺す
15年の飲み会の中で、特に忘れられない瞬間がいくつかある。
一つは、3年前の送別会だ。営業の鈴木さんが、別の部門に異動する時だった。酒が進んでた先輩が、いきなり「田島さん、同年代の女の子がいるから、紹介しましょう」と言い出した。
その相手は、営業事務の女の子。入社3年目。その女の子の隣にいた同期男性と、付き合ってることは、みんな知ってた。
先輩は、その女の子を俺の前に連れてきた。「田島さん、この子、独身で、いい子なんですよ」と。その女の子は、思いっきり困った表情をしてた。同期男性も、テーブルで唖然としてた。
その瞬間、全員が俺を見た。「可哀想な田島さんのために、俺たちが動いてあげよう」という、同情と見下しが混じった視線。
俺は「あ、ありがとうございます。でも、大丈夫です」と言った。その時の自分の表情を、今でも思い出すことができない。
もう一つは、去年の忘年会だ。その時は、部内で少数派の独身者3人で、隅っこに座ってた。
酒が入った営業部長が、俺に向かって「田島さあ、いつまで独身で、同じ仕事してるつもり?」と聞いてきた。
その瞬間、周りが笑った。
「結婚するのが、キャリアアップだと思ってるんですか?」って反論したかった。でも、その場で反論すれば、もっと揚げ足を取られる。だから、「あ、そっすね」と笑った。
その時、隣にいた同年代の独身同僚が、黙ってビールを飲んでた。同じ地獄に一緒にいるのに、何も言えない。それが一番つらかった。
「体調悪い」──飲み会から逃げるための言い訳
ここ数年、俺は飲み会を避けるようになった。
理由は、「体調が悪い」。
胃が痛い。頭が痛い。最近は、「高血圧の数値が上がってるから、アルコール控えてる」と言うようになった。嘘だ。全部嘘。でも、その嘘は、本当は「これ以上、この空気に耐えられない」という叫びだ。
月に1回の部の飲み会。年2回の部門全体の飲み会。年1回の全社飲み会。新人歓迎会。送別会。忘年会。新年会。
これらに全部参加してたら、俺は死ぬ。だから、逃げるようになった。
「申し訳ありません。今日は、体調が優れなくて」と言うと、誰も強く言わなくなった。なぜなら、独身の37歳の可哀想な先輩が、飲み会を避けるのは「当然だ」と思われるようになったからだ。
それは、一種の解放だった。同時に、完全な孤立だった。
飲み会の帰り道が、一番つらい
飲み会が終わって、駅に向かう15分間。
あんたは、その時間の重さを知っているか。
会社の仲間は、駅前で別れる。みんな、それぞれ誰かのもとへ帰る。結婚して、子どもがいる人は、「早く帰らないと」と言いながら足早に去る。彼女がいる若い奴らは、駅前の居酒屋に吸い込まれていく。
残るのは、俺と、たまに独身の同年代の同僚だけ。
そいつとも言葉が少ない。なぜなら、同じ地獄にいる奴とは、最も会話しづらいから。励まし合うこともできず、ただ、共に沈む感覚だけが残る。
そして、俺は一人で駅前を歩く。コンビニの前を通り過ぎる。夜の22時、駅前はまだ人でいっぱいだ。でも、俺の周りだけが、異なる次元に存在している気がした。
1Kのアパートに帰って、一人で飯を食う。スマートフォンを見ても、誰からのメッセージもない。SNSを開けば、同期の結婚式の写真や、後輩の彼女との旅行記が流れてくる。
その瞬間、飲み会での「いじり」が、全部思い出される。
「反論」で反撃しようとした時代
30代前半の頃、俺は本気で反撃しようとしていた。
「だいたい、お前らだって本当に幸せですか?」とか、「婚活なんて、相手の人生のための選択肢じゃないですか」とか、屁理屈で返そうとしていた。
でも、それは逆効果だった。反論するたびに、「あ、コイツは本気で傷ついてるんだ」って、テーブルの空気が確定する。同情と見下しが混じった視線が、刺さるようになる。
それ以降、俺は笑うことにした。相手の言葉に、笑顔で返す。「あ、そっすか」「確かに、そうですね」「いやあ、俺も頑張らないと」。その返答の中に、本気は入れない。ただ、空気に合わせる。
15年間、その芝居をやってきた。
そうすると、誰も責められない。相手は「あ、田島さんも前向きなんだ」と思い込む。俺は、被害者のポジションから逃げられる。
でも、その代わりに、自分の人生が何かから逃げている感覚だけが、深くなっていった。
「実績」が、いじりを黙らせる唯一の方法
ここからが、本題だ。
飲み会での独身イジリから逃げるのは、「反論」じゃない。「説教」でもない。「転職」でも「婚活」でもない。
「実績」だ。
もっと正確に言うと、「自分の経済的な選択肢が、もう会社の給料だけじゃない」という、確かな実感。
年収358万の平社員が、飲み会で何か言われても、完全に黙らされる。反論する立場がないから。「だって、お前の給料じゃ」という言葉の前には、誰も立てない。
でも、もし俺が「実は、別でいろいろやってるんだよ」と言ったら、どうなるか。
いじりの質が、確実に変わる。同情から、尊敬に変わるわけじゃない。でも、「奴は何か持ってる」という認識は、テーブルの上に浮かぶ。
そうなると、独身いじりは、相手の方がしづらくなる。なぜなら、彼女がいなくても、その時間で何か作ってるんじゃないか、という疑いが生まれるから。
惨めだった俺が、変わり始めたきっかけ
正直に言う。俺が37歳で何か変わり始めたのは、年下の奴が金を稼ぐのを見たから。
新人時代の後輩が、5年目で会社を辞めた。理由は、副業で月10万稼げるようになったから。その時点で、完全にバカにしていた。「副業?そんなことで何になるんだ」と。
でも、3年後、その奴は自分の会社を立ち上げていた。飲み会で会うと、雰囲気が違う。同じ年代の連中も、その奴の話し方が違うことに気づく。そして、誰も独身のことを言わない。なぜなら、奴は「独身の選択肢を持ってる」側の人間になってたから。
その瞬間、俺は気づいた。
飲み会で独身いじりから抜け出す道は、「彼女を作ること」じゃない。「自分が、給料以外の選択肢を持つことだ」。
XMに5万円入金して、世界が変わった
俺がXMに入金したのは、別に大金が欲しかったからじゃない。
正直、貯金47万の身で、投資に5万入れるのは、完全に無謀だった。でも、その5万が「俺はもう、会社の給料だけの人間じゃない」という、たったそれだけの根拠になった。
チャートを見る。ポジションを持つ。損失が出ても、その画面を見ることで、「俺は動いてる」という感覚が生まれた。
飲み会での空気は、変わらないままだ。相変わらず、「彼女は?」と聞かれる。でも、その質問に対する「俺」の返答の根拠が、変わった。
笑顔で返すけど、その笑顔の裏側に、「お前らとは違う世界を見てる」という、確かな実感がある。それが、本当の強さだ。
駅に向かう15分間も、変わった。コンビニの前を通り過ぎる時も、1Kのアパートに帰った時も、今は「俺は動いてる」という感覚が、その瞬間を支えている。
それが、本当の逆襲だ。
── 田島タカシ
▶ 俺がXMを選んだ全理由を、1ページにまとめた。
▶ FXに興味が出てきたなら
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