東洋大学を卒業して15年。同じ年に部品メーカーに入った同期は5人だった。今、その5人全員が既婚者だ。子どもがいる奴も3人いる。俺は相変わらず独身。この現実を受け入れるまでに、どれだけ壊れたかをお前に言っておく。

一人目の結婚報告が来た日

2018年のことだ。同期の山下が結婚するという。会社のLINEグループで報告があった。

「みんなへのご報告です。この度、結婚することになりました」

画像付きだった。山下と女性の2ショット写真。指には婚約指輪。背景は高級そうなレストラン。

俺は「おめでとう!」とスタンプを押した。心からじゃねえ。やることだと思ってた。

その日の夜。俺は居酒屋で一人、生ビール飲んでた。山下の指輪の写真を何度も見た。

「34歳か。普通だな」

そう呟いた。その時点で俺も34だった。

二人目、三人目は矢継ぎ早に来た

翌年。二人目だ。同じく営業の田中が結婚した。

その年の秋。設計部の佐藤も。

LINEグループは結婚報告、結婚式のお誘い、新婚旅行の報告、妊娠報告で埋まるようになった。

「ベビーカー、どれがいいですか?」 「出産予定日まであと○日です」 「女の子が産まれました。名前は〇〇です」

赤ちゃんの写真が流れるたびに、俺の心は小さくなっていった。

正直、言っておく。

祝福してるフリが、だんだん上手くなった。

心の中で「この野郎」と思いながら、「おめでとうございます」と打つ。返信は1秒で出す。遅れちゃ駄目。疑われちゃ駄目。

四人目は元カノと付き合ってた奴だった

2022年。四人目。製造部の原田だ。

奴とは大学時代に同じゼミだった。その頃、俺は原田の元カノ・由美と付き合ってた。1年で別れたが。

その由美が、原田と付き合ってたんだ。

そして原田と結婚する。

俺は会社の席で、スマホでその報告を読んだ。

「この野郎」

出ちゃった。声に出してしまった。隣の奴が振り向いた。

「あ、いや、ゲーム」って誤魔化した。嘘だった。

あの日の帰り、俺は山手線で立ってた。窓に映る自分の顔。40にもなろうとしてる男の顔。

反対側の車両が通り過ぎるたびに、乗ってる奴らを見た。彼女連れの男。親と一緒の親孝行息子。子どもを肩車してる父親。

誰もが誰かのそばにいた。

俺以外は全員。

五人目で「比較地獄」に気づいた

2024年。最後の一人。企画の星野が結婚した。

LINEグループには、新居のハウスメーカー提案書のスクショが流れた。4LDK。庭付き。駅から徒歩5分。夢のマイホーム。

この時だ。俺は気づいた。

独身の焦りの正体は「結婚できていない自分」じゃなく、「奴らとの比較」だってことに。

山下は34で結婚。俺は36のまま独身。

田中は子ども1人。佐藤は子ども2人。原田も子ども1人。星野は新居。

そして俺は貯金47万。1K暮らし。車もない。彼女もない。

奴らを見て、自分を見て、「終わってる」と思った。

断言する。この比較地獄ほど、人間をダメにするもんはない。

だから俺は何をしたか。

LINEグループの地獄

2024年から2026年。この2年間で、LINEグループには何が流れたか。

星野の妊娠報告。「妊娠判定が出ました。来年の春に」と喜びいっぱいの文字。それに続く「超音波検査の写真です」という画像。赤ちゃんの輪郭。その写真に「可愛い」「おめでとう」というコメント。俺は「おめでとう」とだけ打った。

原田の子ども写真。「幼稚園受験、受かりました」。子どもが合格証書を持ってる写真。その下には「祖父母も大喜びです」。つまり、奴の親からも「孫の成功」という至福のコメント。

田中の家族写真。「ゴールデンウィーク、沖縄旅行に行ってきました」。妻と子どもと、全員が笑顔。背景は海。タグは「家族の思い出」。コメント欄には「いいですね」「家族っていいな」。

佐藤の新居完成報告。「ついに家が完成しました」という写真。4LDKの新しい家。子ども用の部屋、夫婦用の部屋、親戚が泊まれるゲストルーム。その説明とともに「20年ローンを組みました」と。つまり、家族の幸せが30年分、計画されてるってこと。

山下の「長男の小学校入学式」。ランドセルを背負った子ども。その横で妻と笑ってる山下。コメントは「素敵な家族ですね」。

全部。全部が「家族の幸せ」の報告。俺にとっては「取り残された感」の報告だった。

その度に、俺は「おめでとう」と打つ。1秒以内に。遅れちゃいけない。不自然に見えちゃいけない。心からじゃないのが、バレちゃいけない。

寝る前に、毎日LINEを見た。その度に、奴らの人生が前に進んでるのを見た。俺は、止まったままだった。

飲み会で独身は自分だけになった日

2018年の新年会。同期5人と飲んだ。その時は、独身が俺と田中の2人だった。

山下が「新婚だから、奥さんが心配で」と早めに帰った。佐藤は「妊娠中なので」と来なかった。でも残り3人で、飲んだ。

独身同士だから、話は気楽だった。「次のキャバクラ行こうか」という下ネタ。「給料の使い道がない」という愚痴。

その時は、独身2人。「あと3年くらい独身でいようぜ」という話もした。気楽だった。

2019年。飲み会に来たのは、俺と原田。3人が既婚者。奴らは「子どもがいるから」という理由で、早めに帰った。

原田と二人で飲んだ。話は「結婚すると人生が変わる」という、既婚者たちの話ばっかり。独身の話題は、もうなかった。

2022年。飲み会に来たのは、俺だけ。独身は。

同期5人。5人全員が既婚者になってた。1人で飲んでた。つまり。

その時、初めて「あ、俺、完全に取り残された」と思った。もう「遅れてる」じゃなく、「別の人生」に見えた。

飲んでる最中も、話題は子どもの学費。ローン。妻の愚痴。全部が「家族」の話。俺は何を話すのか。「XMの相場分析」か。「月の利益」か。

誰も興味がなかった。奴らは家族の話をしてて、俺は市場の話をしてた。別の世界の人間になってた。

2024年の正月。家族の集まりで、親戚から聞かれた。「タカシ君、彼女は?」と。

いない、と答えた。その時の親戚の目。同情。憐れみ。「37歳でまだ独身」という事実が、全部を物語ってた。

その帰り、新幹線に乗った。隣には家族連れ。親が子どもに、新幹線の景色を見せてた。「ほら、綺麗だね」と。

俺の隣は、空席だった。

「奴らのゲーム」から降りることにした

2024年11月。俺は決めた。

奴らが結婚で競争してるなら、俺は別のゲームをやる。

奴らの人生を見るのをやめた。LINEグループをミュートした。Facebookも見なくなった。

その代わり、自分の人生の盤を作ることにした。

それがXMとの出会いだった。

5万円を入金した。初めてFX口座を開いた。初めてドル/円を買った。初めてチャートを目で追った。

LINEグループで流れる結婚報告も、赤ちゃん写真も、マイホーム自慢も、見え方が変わった。

「あ、奴らはあのゲーム。俺はこのゲーム」

たったそれだけで、気持ちが軽くなった。

比較じゃねえ。別の道だ。別のゲームだ。

奴らは結婚式で親戚に紹介される人生を歩んでる。その代わり、ローン返済に追われ、子どもの教育費に頭を抱えてる。

俺は一人で市場と向き合う人生を選んだ。

「奴らに勝つ」じゃねえ。「奴らと違う戦場で戦う」ってこと。

焦りから解放される条件

LINEグループの報告はいまだに来る。四月にも星野の子ども誕生報告が来た。

その時、俺は何を思ったか。

「おめでとう」

心から出た。本当だ。なぜなら、もう比較してなかったから。

独身の焦りって、「自分の人生」がねえ状態なんだ。だから奴らの人生が光って見える。羨ましくて、悔しくて、怖くなる。

でも「自分のゲーム」を始めると、視界が変わる。

今、俺が毎朝見てるのはLINEじゃなく、XMのチャートだ。ドル/円。ユーロ/ドル。ポンド/ドル。

市場は月曜から金曜、四六時中動いてる。勝つか負けるか、相場が教えてくれる。シビアだ。比較なんて入り込む隙がねえ。

「あいつは結婚した。俺はまだ」

そんな感情は、「今朝のチャート分析を終わらせよう」って思考に吸収される。

独身の焦りを消す唯一の方法

正直、認めたくなかったが。

俺の焦りの正体は、「結婚できない自分」じゃなく、「人生にテーマがない自分」だった。

奴らは「結婚」という共通のテーマを持ってた。だから一体感があった。進捗を共有した。子どもの成長を祝った。

俺は何を持ってたか。何もねえ。毎日が仕事と家と職場の往復。給料は上がらない。彼女もできない。何も起きない。

だからこそ、奴らのテーマが羨ましかった。

でもテーマってのは、結婚だけじゃねえんだ。

FXだっていいし、ビジネスだっていい。株式投資だって、不動産だって、資格取得だって、なんだっていい。

大事なのは、「自分が進める道」を決めることだ。

その道を決めた瞬間、他人の人生は参考データになる。競争相手じゃなく、別の選択肢の例になる。

俺はそれを、XMで学んだ。

── 田島タカシ

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